駅と駅舎の旅写真館・home

鷹泊駅 (JR北海道・深名線)~木造駅舎の旅~


20年前、車内から見た駅は…

 ある日、まだ廃線となる前の深名線の写真を懐かしく見ていた。すると夜の鷹泊駅の写真があった。1990年代前半の冬、深川行きの列車に乗っていて、鷹泊駅に停車した時、車窓の外にたまたま駅舎が入ったのでシャッターを切ったのだろう。

 その頃は木造駅舎に興味は無かったが、当時、深い興味を持っていたら絶対に下車していただろう…。お客さんをひたすら待つように、灯りをともし夜の沈黙の中で浮かび上がる姿を見つめながら、ひたすら惜しく思った。

20年前の深名線の旅、列車は鷹泊駅で停車した…
( 20年前の深名線の旅、列車は鷹泊駅で停車した。)
廃線から約20年、深名線・鷹泊駅の跡地へ…
( 廃線20年後、鷹泊駅跡地に立った…)

 あの一枚を撮影してから20年過ぎた頃、鷹泊駅の跡地に立っていた。1995年(平成7年)、深名線が廃止されてから18年、あの時、灯りをもらしていた窓は塞がれ、廃れた姿を晒しながらも、いまだに残っていた。よく残っていたものだ。

深名線・鷹泊駅、廃線後も健在な木造駅舎
(老朽化してるが健在、鷹泊駅の木造駅舎)

 駅舎の正面に回ってみた。駅名版はとうに無く、ホーム側同様に窓のほどんどは塞がれていてる。壁面の木材は古び、正面下部の板張りはベニヤ板に張り換えられていたりと老朽化は進んでいた。しかし、昔のままの姿をよく保っていて、駅らしい雰囲気は十二分に留めている。

深名線・鷹泊駅、待合室は倉庫に
( 待合室内部。)

 出入り口の窓からガラス越しに内部を覗いてみた。待合室や駅事務室だった所には、何かの袋に入った建材らしきものや肥料やらが山積みにされていた。廃線後、駅舎はどうやら倉庫として利用されているようだ…。ゴミ捨て場みたいにごちゃごちゃに物が置かれた様子は、歴史ある駅舎の扱いとしては哀れに思うが、廃線後、用途を与えられたからこそ、ここまで生きながらえてきたのも事実だろう。

 よく見ると、積み上げられた物の間から、窓口の造りがとても良く残っている事に気づいた。暗くてよく見えないが、待合室も往時の姿をよく保っているようだ。

深名線・鷹泊駅の木造駅舎、ホーム側の風景
( ホーム側。)

 ホーム側にまわって駅を眺めてみた。駅舎はホーム側の上屋が崩れかかっているが、かろうじて駅らしい姿を留めていた。あの時の水色の塗装もそのままだ。

鷹泊駅周辺の眺め
( 鷹泊駅周辺の眺め。)

 プラットホームの跡は残ってたが、廃線跡はよく分からない。年月の流れで周辺の土地に取り込まれてしまったのだろうか…。

 2013年は寒い日が続き、5月になっても北海道では畑や原野には雪が残っている場所も多かった。鷹泊駅の道床跡や周辺に広がる畑は、雪を被った湿原のようにぬかるんでいた。少し遠くに学校が見えた、そしてその後ろの小高い丘の上にはお寺のような建物があった。

 周辺の畑には何が植えらているのだろう?お米だろうか、それとも蕎麦だろうか…。深名線廃止が迫った1995年の夏、車窓から見た一面真っ白の蕎麦畑がきれいだったなあ…。

鷹泊駅の木造駅舎、崩落寸前の上屋
( 上屋は崩落寸前…)

 駅舎は「崩れかかっている」というレベルではなく、上屋は今にも崩落しそうな程ボロボロで、年月は確実に古き駅舎を蝕んでいる事を痛感した。放っておけば数年の内に崩れ落ちるだろう。何とかならないものだろうか…。

鷹泊駅跡、プラットホーム跡の謎の木造小屋
( 少し離れて謎の小屋が建っている。)

 駅舎から少し離れて、小さな木造の小屋が建っているのが見えた。こちらは駅舎以上にボロボロで、廃墟の様相を呈している。

 詰所だろうか、倉庫だろうか…? 何だろうと思ってカメラを隙間に押し込んでシャッターを切った。

鷹泊駅、謎の小屋はトイレだった
( どうやらトイレのようだ。)

モニターで確認すると・・・、右側に扉のある小室があるのが目に付いた。どうやらトイレのようだ…。左横下部のコンクリート壁のあたりは、溝があるだけの小用便器だろう。

 だけど、この建物の外観は荒れているが、内部はそれほど荒れてもいないようで、廃線から18年経っても茶色く塗られたペンキはいまだ色艶を保っているのが不思議だ。壁で雨風に直接晒されなかったからかもしれないが、もしかしたら近くの農家の人が誰かが、廃線後も修復して使っていたのかもしれない…。

鷹泊駅、木造駅舎と駅前の石造りの農業倉庫
( 駅前、石造りの農業倉庫。)

 駅前には石造りの大きな農業倉庫も健在で、駅の最盛期を偲ばせる。かつては盛んに農産物が鉄道で出荷されていった事だろう。

鷹泊駅前の風景
( 駅前の風景。)

 名残惜しいが、そろそろ鷹泊駅を去らなければいけない。駅から伸びる道道693号線は鷹泊鷹泊停車場線という名称で、深名線が廃止された今でも鉄道の名残を留めている。

 周囲は畑は広がる中、建物が道沿いにポツリポツリと建つ静かな集落だ。

深名線代替のJRバス、鷹泊待合所。
( 深名線代替のJRバス、鷹泊バス停。)

 国道275号線に出て少し歩くと、深名線代替バスの待合所がある。程なくすると、深川行きのバスがやってきた。観光バスのような車両で、ローカル路線バスにしては豪華だ。しかし乗っていた乗客はわずか数人だった。

 今回の旅で訪れたのはこの鷹泊駅だけだが、2013年当時、深名線には他にも添牛内駅、沼牛駅、政和駅にも木造駅舎が残存している。政和駅は一時期、飲食店として使われていたようだが、これほどまでに残っているのは、跡地利用のあてもなく、そのままにしておいても差支えがなかったからだろう。だけど運良く生き長らえた深名線の忘れ形見だ。何とか保存できないものだろうかと思いながらバスに揺られた。


[2013年(平成25年)5月訪問]

鷹泊駅・基本情報+

鉄道会社・路線名
JR北海道・深名線
駅所在地
深川市多度志町字鷹泊
駅開業年
1926年 (大正15年)11月10日(鉄道省・雨龍線、多度志‐鷹泊間開通により開業。)
駅舎竣工年
??
駅営業形態 (廃線時)
無人駅。
その他
廃線後のアクセスは代替バス・ジェイアール北海道バス・深名線、鷹泊停留所から徒歩2分ほど。(時刻表はリンク先の「深川方面時刻」へ。)

北海道の保存木造駅舎

沼牛駅(JR北海道・深名線)
廃線後、地元の人が細々と手入れ。2016年クラウドファンディングできれいに補修。
石切山駅(定山渓鉄道)
同線唯一の残存駅舎。石山振興会館として、地元の人々が多目的スペースとして利用。