信濃竹原駅 (長野電鉄・長野線)~開かずの駅舎の味わい深さよ…~



使用停止から何年も過ぎた木造駅舎

長野電鉄・信濃竹原駅、閉鎖された改札口

 木造駅舎が残る信濃竹原駅で下車したが、改札口は板で塞がれ「出口はあちら側でございます」という紙が一枚貼り付けられていた。駅舎こそは健在だが、もう使用停止されていたのだった。駅への出入口は、駅舎なんて無いかの如く、ホーム端が案内されていたのだった。

長野電鉄長野線・信濃竹原駅、昭和初期の古い木造駅舎

 信濃竹原駅の木造駅舎は、駅開業の1927年(昭和2年)築で、そのままの年月が染み込み古びた様が味わい深い。現役時とほとんど変わらない姿なのだろう。数年間、使用停止の状態が続いているらしいが、いまだに取り壊されていない。

 外は雪が降りしきる厳しい寒さで、何度、駅舎の中に逃げ込みたいと思った事か…。健在なのに中に入れない、まるで抜け殻のような駅舎が一層うらめしかった。

長野電鉄・信濃竹原駅、趣深い木造駅舎

 駅の顔と言える出入口正面に対峙するように立った。じっと見つめると、この駅の長い年月を語りかけてきているような、何ともいえない渋味が迫り来るかのような印象深い表情を見せていた。

長野電鉄・信濃竹原駅、閉鎖された待合室

 窓越しに待合室内部を覗いてみた。比較的、原型を留めてはいるが、とうに無人駅となり、埃っぽく薄汚れた室内が、長期間、誰もこの中に足を踏み入れていない事を物語っていた。

 運賃表が窓口上部に掲げられたままで、約3年前に廃止となった木島線の運賃も載っていた。信濃竹原駅から終点の木島駅まで650円なり。

レトロな物の数々…

長野電鉄・信濃竹原駅、駅舎と古い駅施設群

 駅舎背後の駅構内には、駅関連施設の木造建築物がいまだに数棟残っている。この駅は長野電鉄の中でも、比較的、規模の大きな駅だったのかもしれない。

長野電鉄・信濃竹原駅、貨物ホーム上屋の注意書き

 その中でいちばん奥にあるのが、側線の貨物ホーム跡で、貨物上屋まで残っていた。貨物取扱はとうの昔にやめたのだろうが、信濃竹原駅長の名で、「車扱貨物の積卸時間について」「車扱貨物の留置時間について」という2枚の注意書きの板が掲示されたままだった。制限時間を越えると貨車留置料を取られるとの事。

長野電鉄・信濃竹原駅前の日本通運跡

 駅前には「鉄道宅貨物取扱所」という日通のホーロー看板が添えられた家屋があった。だが、今では廃屋となってしまったようだ。昔の鉄道駅には日通こと日本通運が付き物だったようで、このように、いまだに駅前にその痕跡を残す駅を見る事もある。

 信濃竹原駅は以前は貨物取り扱いが盛んだったようで、通りかかったお年寄りが、肥料の取り扱いでとても賑わっていたと懐かしそうに話してくれた。肥料は名物のリンゴのためだったのだろうか…? ウィキペデアによると、1979年(昭和54年)4月1日で信濃竹原駅、および長野電鉄での貨物営業が廃止されたと標されていた。

信濃竹原駅、駅員宿舎(or詰所)跡

 駅舎と貨物上屋跡の間には、詰所か駅員宿舎と思われる建物も残る。保線員や駅員と言った鉄道員さんが休憩したり泊り込んだりしたのだろう。そこで働く人々だけが居なくなって、駅舎や各施設と言った建物だけがそのまま残った。この駅が賑やかだった頃の面影を伝えている。でも、駅員さんが建物のなかからひょっこり出てきそう…、そんな現役時さながらの雰囲気がいまだ漂っている。

長野電鉄・信濃竹原駅、2面2線のプラットホーム

 信濃竹原駅のプラットホームは2面2線の行き違いできる配線で、先程の貨物上屋跡があるホームに分岐する側線跡もある。

 駅舎から離れたホームで湯田中行きの列車を待った。湯田中の方を見ると、霞んだ空の向こうに、雪を被った志賀高原の山々がそびえているのが、白く霞んだ空の向こうに見えた。

[2005年(平成17年) 1月訪問](長野県中野市)

~◆レトロ駅舎カテゴリー: 私鉄の保存・残存・復元駅舎

追記: 閉鎖された駅舎の公開

 元小田急特急車両の10000形・HiSEこと1000系電車を使った観光特急「特急ゆけむり~のんびり号~」の下り列車で、信濃竹原駅がノスタルジックな木造駅舎が残る駅として、停車駅に選ばれた。その際に、普段は閉鎖されているあの待合室も公開されたとの事。

 また2015年(平成27年)には、信濃竹原駅開業88周年を記念した記念硬券切符の発売イベントが、同駅の待合室で行われたという。

 築91年となる2018年(平成30年)9月、待合室で長野電鉄の風景をテーマにした写真展が開催された。そのため、待合室内に入る事ができ、記念入場券やグッズの販売も行われた。

駅舎待合室公開中の信濃竹原駅
イベントで待合室が公開された信濃竹原駅(2018年)

 2018年の時の訪問記は姉妹ブログの下記記事へどうぞ。
長野電鉄・信濃竹原駅~開かずの駅舎が解き放たれる時~


…と、たまに待合室が公開されているようなので、こまめに情報をチェックしていると、また見られる機会があるかもしれない。