レトロ駅舎スタンプラリーの旅(1)〜岡山の古く趣ある木造駅舎を巡る〜

序章‐レトロ駅舎スタンプラリーとは?列車で全駅制覇するのめのプランと切符。そして最初の一押しは…

岡山地区の味わい深い木造駅舎を巡るスタンプラリー

 ウェブ上のニュースで、岡山地区の木造駅舎を巡る「2012レトロ駅舎スタンプラリー」というイベントが開催される事を知った。JR西日本、岡山支社内の古く趣深い木造駅舎が残る8駅のスタンプを集めるスタンプラリーだ。ちょうど秋の旅行は何処に行こうかと思案していた時に「これだ!」と見事にツボにはまり、私も参加する事にした。
 このスタンプラリーは過去に何度か開催された事があり、その度に対象駅が少しづつ違っているらしい。それだけ岡山支社管内には趣のある木造駅舎があるという事だろう。今回、対象となるのは津山線の建部駅。因美線の美作滝尾駅美作河井駅那岐駅。姫新線の美作江見駅美作千代駅岩山駅。伯備線の方谷駅だ。那岐駅、美作江見駅以外は訪問した事があるが、訪問済みの6駅どれも見所のある素晴らしい駅舎ばかりで、2回3回と訪れても決して飽きる事は無いだろう。また私は9月にアメリカ旅行に行き海外の刺激を受けてきたばかりで、逆に素朴で味わい深い木造駅舎に再び触れたいという欲求を感じるようになっていた。だから、再びそんな駅舎にまみえられると考えるだけでわくわくしてくる。

スタンプラリー全駅制覇プラン、悩ましいルートと切符…。

 さて、訪問プランだ。8駅は何れも海沿いより内陸・山間部の方に位置し、JR西日本岡山支社広範に散りばめられていると言った感じだ。対象8駅の路線は全てローカル線の駅と言えるだろう。運良く1時間後に列車が来てくれる場合もあるが、昼間は数時間も列車間隔が空く場合もある。なので制覇には2日見ておいた方がいい。どの駅から始めればいいか…、どの順番で回ればいいか…、できれば各駅でそれなりの見学時間を設けたい…。そして運賃の兼ね合いもあり、どうまわるのが経済性と効率のバランスが取れるのか…。色々な希望が頭の中で渦巻き、あるプランが浮かんでは消えの連続で、悪戦苦闘しながら時刻表をめくり続けた。
 切符は岡山一帯のJR普通列車などが1900円で1日乗り放題の「岡山・尾道おでかけパス」というフリーきっぷがあるのを知った。青春18きっぷ期間外の岡山版青春18きっぷと言った感じの切符だ。このようなフリー切符は土曜休日しか利用できない場合が多いが、幸い平日にも利用できる。
 やはり最後まで私を悩ませたのが列車本数の少なさだ。ここで上手く行き「やった!」と思ったら、あそこ上手く行かないというパターンの連続だ。だが、因美線に「みまさかスローライフ列車」という臨時列車が運転される事を知った。国鉄型気動車に揺られのんびりと沿線風景を眺め、停車駅での時間を楽しむという観光列車で、スタンプラリー対象駅の美作滝尾駅、美作河井駅、那岐駅にも停車する。これを使わないテは無い。イベント列車でそれなりの乗客が居て、木造駅舎のしっとりとして素朴な雰囲気には程遠いかもしれないが、前回とは違った雰囲気を味わうのも面白そうだ。11月は10日土曜日、11日の日曜日の僅か2日のみの運転だが、これは自分が合わせるしかない。 …という事で、とりあえず「みまさかスローライフ列車」がプランの軸として固まった。そして、編み出した大まかな行程は以下の通りだ。津山駅を中心に十字に移動する感じで、

 一日目は、岡山駅から津山線の建部駅、みまさかスローライフ列車で因美線の3駅のスタンプを押し津山泊。切符は名古屋駅から那岐駅までの普通乗車券。那岐から津山まではその都度支払い。
 二日目は、津山駅から姫新線上り列車で美作江見駅へ。そして下りで折り返し美作千代駅、岩山駅へ。そして新見駅で伯備線に乗換え、ラストの方谷駅でスタンプラリー完遂。切符は岡山・尾道お出かけパスを利用。

 何とか組み上げたが、問題が姫新線の岩山駅から隣の新見駅までが徒歩移動になる事だ。14時15分に岩山駅に着いて、新見駅は16時15分発の列車に乗らなければいけない。この約2時間で約9kmの歩行は正直きついが、できれば方谷駅に幾分でも明るい内に着きたかった。ちなみに姫新線の14時15分の次の列車は、3時間も空き17時32分となってしまう。伯備線は16時15分の列車に間に合わなく、次の17時48分発でも、方谷駅でスタンプを押しその日の内に何とか帰宅できるので、何とか調整は効く。全行程を早く回る事だけを目的にしたら、タイトな駅間徒歩なんてしなくても十分回れるが、「駅」というものを楽しみたいと思うし、この機会にスタンプラリー対象外でも見たいという駅もある。岩山駅でだけは時間はほとんど取れないが、しょうがないのでそこだけは妥協しようと諦めた。

最初の一押し!津山線の建部駅。

レトロ駅舎スタンプラリー。台帳となるパンフレット。

(スタンプラリー台帳となるパンフレットを岡山駅で入手。)
 名古屋始発の早朝の新幹線に乗り、岡山駅に着いた。津山線の列車まで約20分しかなく、その間にスタンプシートとなるパンフレットと、翌日利用の岡山・尾道おでかけパスを手に入れなければならない。このパスは当日購入はできず、前日までの購入が必須となっている。
 新幹線、四国へ、山陰へ、そして地元の人々、鉄路が交わる要衝・岡山駅らしくごった返す人混みを急いで縫うように歩き、改札内のみどりの窓口に至った。窓口はたいして混んでいなく、すぐに私の番になり、岡山・尾道おでかけパスをを購入する事ができた。そして、ついでにレトロ駅舎スタンプラリーのパンフレットはあるかと聞いてた。すると、扉の奥に引っ込みパンフレットを手に戻ってきてくれた。さあ、準備は整った。いざ出発!
 津山線8時48分発949Dは定刻通り岡山駅を出発した。外の景色は雨で彩られしっとりとしている。
「雨か…行動し辛いな。でも駅を撮るだけで駅舎内に居る事が多いからまあいいか…。明日が雨なら困るけど」
と思いながら列車に揺られた。

 9時31分、建部駅に到着。日曜日なので同じ目的の人がいるかと思ったら、下車客は他に1人だけでその人も駅前で待ち合わせをしてすぐにどこかに行ってしまった。
 この駅には約4年振りの訪問だ。構内通路を渡り駅舎側のホームに至ると、まず隣接する駅員宿舎跡とその敷地が目に入る。以前は駅にタクシー会社が入居していたが、数年前に引き払い宿舎はどうなってしまうのかと心配してたが、とりあえずは残存していてよかった。だが、窓や扉が板で塞がれているのがどこか寂しげで痛々しい…。以前はこれら施設が使われていて、活き活きとしている様子がまるで昔ながらの駅風景を見ているようでとても印象的だっただけに尚更だ。1900(明治33)の開業以来の木造駅舎が素晴らしいが、隣接する駅員宿舎とその敷地も同様に素晴らしく、そしてとても貴重だ。駅舎同様、何とか保存できないものだろうか・・・。
 駅舎の待合室に入ると窓口跡の前に、スタンプ台が設置されていた。早速、最初の一押しだ。台帳を広げスタンプに十分インクを染込ませると、「エイヤっ!」と気合を入れる気持ちで、スタンプを押し込んだ。だがちょっと気合を入れすぎたのだろう…。建部駅の駅舎が刻み込まれた台帳には、インクがべったりとのっていた。駅に誰もいないのをいい事に、手小荷物窓口跡のカウンターに暫く放置し乾かしておく事にした。
レトロ駅舎スタンプラリー、建部駅で一押し!
レトロ駅舎スタンプラリー。一押し目は開業以来の木造駅舎が残る建部駅で!
 建部駅、駅舎隣接の駅員宿舎跡とその敷地。

建部駅駅舎と共に残る駅員宿舎(奥)と浴室(手前)。今は無人で扉や窓が塞がれている。
 台帳を放置し駅舎を見て回る。明治33年開業以来の木造駅舎は2008年に改修された。先日、日テレの「バンキシャ」という番組で文化財登録された駅舎としては最古の駅舎として紹介された話題になった。使い込まれ年月を経た雰囲気をできる限り潰さないで改修された駅舎はやはり素晴らしい。手小荷物窓口跡、木製の窓枠、花崗岩を使った石垣や柱の台座…どれも嘆息ものだ。雨に濡れるのを構わず夢中で撮影を続ける。
 でも完全に無人駅となり、窓口の向こうの駅務室ががらんどした様子は寂しげだ。以前はタクシー会社の人が簡易委託も請け負い窓口の中に居たのだが。それはそれで観察や撮影に気を使うので、駅愛好家としてはやりづらいと感じたものだ。しかしいざ居なくなると、もの足りなく感じる。ああ、なんて無いものねだりなんだろうか…。

 待合室で座っていると、ぽつりぽつりと人が入ってきてはスタンプを押しては外に出て行く。スタンプ台を見つけると粛々と押していくという感じだが、中には十数枚もの台帳にひたすら押し続ける人や、押したスタンプ上にちり紙をそっと置き余分なインクを慎重に吸い込ませている収集目的のスタンプマニアと思しき人まで・・・。スタンプラリー風景も色々で面白い。
 このように、私の滞在中、20人近くの人がスタンプを押しに来ていただろうか。しかし、それらの人々の中に誰一人として列車利用の人が居なかったのは寂しいものだ。列車ダイヤが不便なので予想はしていたが…。車で駅前に乗り付けてはスタンプを押し、訪問証明程度に駅舎を撮影するとすぐに去っていく。このスタンプラリーが車利用での参加を締め出している訳でもないし、鉄道ファンや駅鉄だけを対象としたものでも無いから、全く問題は無いものなのだろう…。しかし、そんな事よりも、車での参加者が駅舎を見て堪能しようという様子があまり見受けられなかったのは何より残念だ。時間などの制約で、やり方はいろいろあるが、こんなに素晴らしい木造駅舎を前に、素通り同然に立ち去っていくのは無いんじゃないかと思った。駅だけを目的に長い事居る私の方が変わっているのは重々承知している。しかし、スタンプを押す以外に、せっかく来たなりの見方があるのでは…?どこか釈然としない思いが残った。

 約1時間半、滞在し惜しみつつ11時03分発の津山行きの948D列車に乗り込み建部駅を離れた。雨は相変わらず止まなかった。 

(当サイト内関連ページ:「建部駅訪問記(2008年9月)
建部駅、明治の木造駅舎。

建部駅の木造駅舎。2005年に登録有形文化財に指定された。
建部駅、木製の手小荷物窓口跡。
非常に良く原形を留めていると手小荷物窓口跡。
建部駅、駅舎ホーム側、木製の古い窓枠。

建部駅駅舎ホーム側。使いこまれた木製の窓枠が競演しているかのように続く。
建部駅にスタンプを押しに来る人々

建部駅滞在中、同じようにレトロ駅舎スタンプラリーのスタンプを押しに来ている人の姿も見られたが…

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