駅と駅舎の旅写真館-railwaystation.jp-

中塩田駅(上田電鉄・別所線、洋風木造駅舎)


少し前の中塩田駅

修復前の中塩田駅駅舎

 中塩田駅は終点の別所温泉駅と共通デザインの洋風木造駅舎だ。別所温泉駅は、文字通り別所温泉の玄関口として整備されているが、この中塩田駅は朽ちるに任せているといった印象だ…。爛れているかのように壁が剥がれるなど痛みが目立つ状態で、取り壊しを待つだけのように思えた

側線に放置される丸窓電車・モ5250形

 踏切を隔て上田方にある側線跡には、丸窓電車ことモハ5250形電車が放置されていた。この車両は上田電鉄のはるか前身、上田温泉電軌が1928年(昭和3年)に新造導入した生え抜きの車両で、かつてはデナ200形という形式名だった。

 中塩田駅とともに同社の歴史を今に伝える車両だが、こちらも悲惨な保存状態で、これが長年活躍した名車の末路かと思うと哀れみさえ感じる。だがその後、この電車は丸窓電車に縁深い長野計器(株)に引き取られ、「長野計器丸窓電車資料館」として整備・保存され、一般公開されている。

中塩田駅再訪記と写真

 数年後、中塩田駅を再訪してみようと思った。あのボロ駅舎は、あれから更に荒廃しているのだろうか…。もしかしたら既に取り壊されているかもしれないと思った…。
 

修復後の中塩田駅駅舎(上田交通別所線)

 しかし意外にも、駅舎は整備改修されていたのだった。 全面的にとまではいかないものの、壁が剥が落ちた部分は埋められるなど、主な部分は修復されていた。

中塩田駅、ローマ字の駅名表記と車寄せの社章

 英語で「NAKASHIODA STATION」と正面に刻まれいる所や、車寄せの社紋が、古びていてもなお誇らしげで、年月を経てきた駅の風格を漂わす。

中塩田駅駅舎、修復された窓

 待合室部分の窓の一部はサッシ窓に変えられていたが、木枠で木の窓枠風に仕上げられている所が目を引く。これを見たとき、修復に関わった人は中塩田駅の良さをよくわかっているものだと感心した。窓としての機能はサッシ窓で十分果たせているが、やはりレトロで趣のある洋風木造駅舎にサッシ窓が露出しているのは雰囲気を損ねる。この窓枠を経営が厳しい上田電鉄がやっているのだから余計に感心だ。経営事情で新駅舎を建てる費用がままならないというのもあるのだろうが、この駅舎をできる限り大切に使っていこうという気持ちが感じられる。

中塩田駅待合室と窓口跡

 駅舎内の窓口跡と待合室。現在は無人駅となり塞がれてはいるが、比較的、原形を保っていると思われる。おもちゃやぬいぐるみが窓口カウンターを賑わしている。明るい緑色に塗られているのが、古くくすみがちな駅舎を明るい雰囲気にしようという意図を感じるが、やや派手な感じ…。願わくば、こちらも茶色など渋い色に塗り替えて、窓口も復元し、レトロな雰囲気を再現して欲しいもの。

中塩田駅、木製の改札口

 木製の改札口もそのままだ。

中塩田駅、駅舎ホーム側

 駅舎ホーム側。紺色の手書き駅名看板が渋く、いい味を醸し出し、昔ながらの造りと雰囲気を留める駅舎によく合っている。最近は駅舎など鉄道施設を登録有形文化財に登録する動きが見られるが、中塩田駅もその資格は十分に持ち合わせているように思える。

中塩田駅、雑草が茂るホーム端

 ホーム上田方は荒れ放題で、雑草や花が生い茂り、塞がれた古井戸も残っている。このスペースにはかつて何があったのだろう?

中塩田駅、ホーム上で栽培されるトマト

 雑草で荒れ放題の中に、プチトマトやナスが育っていた。棚が新めでしっかり作られているので、近所の住民が育てているのだろう。

中塩田駅、保線車両が留置される側線

 かつて丸窓電車が保管されていた側線には保線用車両が置かれている。

 同じ敷地に家屋があるが、現在は使われていない様子。よく見ると、窓に日本通運の社章のステッカーが貼られていた。かつて日本中津々浦々の駅前に、日本通運の営業所があったように、この駅にもあったのだろう。

 その家屋と側線の間は空地になっているが、昔は側線が何本もあり、貨物の取り扱いも盛んだったのだろう。2008年8月に元東急電鉄の1000系が上田電鉄で運転開始となったが、3月、同社に搬入された際に、この空地が使われ、この側線のレールに載せられ本線に入ったという。

中塩田駅ホームと廃ホーム

  かつては2面2線だったが、今では一面一線になっている、今でもこの廃ホームのレールは側線として使われているが、別所温泉方ではレールは繋がっていない。しかし上田方の踏切付近で繋がっていて、先ほどの空地の側線から本線に入る場合、一端、この廃ホームの側線まで入り、スイッチバックしている。

雨の中塩田駅

 中塩田駅に到着した時、空は晴れ渡っていたが、いつの間にか、曇っていて、遂に雨が強く降り出した。ゲリラ豪雨と呼ばれる今年の晩夏を象徴する天気だ。家を出た時は快晴だったのだろう…、急な雨で下車客は雨具の用意が無く、駅舎までダッシュする。

中塩田駅、古い乗車位置案内板

 ガラス板の乗車位置表示板。いろいろなものが、この駅のレトロで懐かしい雰囲気を作り上げている。


[2008年8月訪問](長野県上田市)