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松前駅(伊予鉄道・郡中線、木造駅舎)※第2回目訪問


松前駅訪問記と写真

松前駅の木造駅舎。
(4年前と変らぬ姿…伊予鉄道・松前駅の木造駅舎。)

 約4年半振りに、伊予鉄道の松前駅を訪問した。その間にも、いくつもの名駅舎が取り壊されてきたが、松前駅はあの時と変わらない趣深い木造駅舎のまま、私を出迎えてくれた。当たり前のようだけど、失われた駅舎を思うと決してそうではない…、味わい深い光景にホッと胸を撫で下ろす心地で、駅舎の前に立った。

松前駅駅舎、木枠の窓。
(待合室の窓枠も木製だ。)

 待合室に入ると、窓枠も木のままだ。しかし、左側の4枚は使い込まれていない薄い色をしている。取替えの際、ありがちなサッシ窓ではなく、雰囲気を保つため、わざわざ木枠のものを選んだのだろうか…?

 駅舎正面側の窓枠はサッシ窓なのが少々残念だが、まん前に自転車置き場が覆いかぶさっているお陰で、全体を見渡した時でも、気にならない。それに何よりも、たかが少しのサッシ窓のゲンナリ度を補って有り余るほどの雰囲気を、この木造駅舎は持っていると思う。

松前駅、窓口と改札口
(改札口と出札口。)

 有人駅なので窓口には灯りが点り駅員さんが詰めている。改札口には伊予鉄道のICカード、「ICい~カード」のカードリーダーが、古くくすんだ駅舎にあって、現代の設備は異彩を放っている。

松前駅、天井の照明台座。
(天井の照明の台座。)

 天井を見上げると、白い漆喰で固められていた。その中に照明の台座が残っていた。シンプルな台座だが、この素朴な駅舎にどんな照明が付いていたのだろうと想像すると、ワクワクする。

松前駅、車寄せ下の駅出入り口。
(駅舎車寄せの下。)

 出入口の車寄せ下の脇には、割引きっぷなど各種宣伝の貼紙が掲示されている。伊予鉄道側は意識しているのかは知らないが、シンプルで野暮ったく古臭い感じがするこの貼紙が、素朴な木造駅舎にはとてもよく合い、レトロなムードを醸し出している。

松前駅駅前と周囲の風景。
(駅前と周囲の風景。)

 駅前に出て周囲を眺めてみた。駅舎の真正面に自転車置き場が無ければ、木造駅舎と隣接する木造の倉庫と思しき建物の全容が見渡せ、より迫り来るものがありそうだ。だが、乗降客が多い中、この狭い駅前で、利用者の利便性を考えれば仕方ないのだろう…。

松前駅前の未来予想図?
(廃商店に掲げられた松前駅前未来予想図?)

 駅前を歩き回っていると、商店跡の建物に「まさき駅前開発物語」なる駅周辺の将来図が描かれたイラストが掲示されているのが目に入った。三津駅に続き、遂に松前駅も取り壊し計画が具体化しているのかと一瞬衝撃を受けたが、どうやら地元建築士による夢を交えた未来予想図のようだ。それによると、松前駅はベランダの通路付きの3階建ての駅舎になり、周囲に「おもちゃ&IT館」、「海産物館」、「屋台村」なんかが出来、道路も拡張され、まるで駅前全体がショッピングモールのような現代的で明るい町並で、まさにバラ色の未来予想図と言った感じだ。

 “夢”だから夢を膨らませるのは大いに結構だが、バブル期的な香りを感じなくはなかった…。だけど、古くて趣のある今の松前駅の木造駅舎の姿が無いのは何とも残念だ…。歴史の香り漂うこの素晴らしい建物を、新しい街並みに溶け込ませようという発想が無かったのは正直残念に思う。地元の人にとって、古く趣きのある木造駅舎は、ただのオンボロな建物でしかないのだろうか…。

松前駅、駅舎横の塀に囲まれた空間。
(駅舎側面、木の塀。)

 駅に戻り構内をあれこれ見て回った。駅舎の隅に、木の塀で囲まれた庭のようなスペースを発見した。今は使われてなさそうだが、普通の民家のようで生活感が漂い、かつては駅員さんが住み込みで勤務し、洗濯物なんかが干されていたのだろうか…?

松前駅レール脇の保線小屋等。
(駅構内片隅の詰所など。)

 郡中港方の駅構内片隅には、トイレや保線小屋など、いくつかの業務用の建物が並んでいた。だけど、今は使われているのだろうか。

松前駅、かつての貨物用ホーム。
(かつての貨物用ホーム。)

 松前駅のプラットホームは、駅舎に面する1線と島式ホームの2面3線の構造となっている。しかし、島式の駅舎からいちばん遠いホームはレールが赤錆び架線も張られていない。このホームはかつて貨物列車用の側線として使われていたという。

松前駅駅舎ホーム側、古レールの柱。
(松前駅駅舎ホーム側。)

 駅舎が面した1番ホームの上屋は古レールで支えられている。漆喰の白壁も、時々手入れされているようで、きれいな白さ保っている。ここだけでなく、この駅の随所から、古い駅舎を大切に使っていこうという意気込みを感じする。そして、駅員さんが居る。昔ながらの駅風景がこの松前駅には残り、非常に心地よい空間だ。

 駅舎はプラットホームより低いが、両者の距離が妙に狭く、ホームが駅舎を覆い隠しているような圧迫感があり、違和感さえ感じる。たぶんホームを嵩上げしたため、そのようになってしまったのだろう。

松前駅。木造倉庫をホームから見る。
(駅舎に隣接する倉庫。)

 駅舎に隣接する倉庫らしき建物をプラットホーム側から見るとこんな感じだ。壁面の使い古した木の質感にこの駅の歴史が滲み出、倉庫にしておくのがもったいないほどいい風情だ。もし使われていないとしたら、ギャラリーとか有効活用できないものだろうかと想像は膨らむ。


[2007年1月訪問](愛媛県伊予郡松前町)


【⇒約4年半前、初めての松前駅訪問はこちらへ。