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松前駅(伊予鉄道・郡中線、木造駅舎)


松前駅訪問記と写真

松前駅ホーム
(漆喰の白壁が印象的な松前(まさき)駅駅舎。)

 青春18きっぷを使っての旅行中、JRから一旦離れて伊予鉄道郡中線に乗車し、終点の郡中港駅からJR予讃線の伊予市駅に抜けようと思っていた。両駅は駅名こそは違うが、駅間は徒歩約1分と至近距離にあり、楽に乗り換えができるとの事だ。

 そう思い、松山市駅から郡中線の列車に乗ったのはいいが、予讃線の列車の時間を考えると、郡中港駅に到着するのは早くなり過ぎそうで、長い待ち時間が出来てしまうだろう。それならば、郡中線に面白そうな駅があったら途中下車しようと思いついた。郡中港までの乗車券を買っていて、途中下車すると前途無効になってしまい、運賃が無駄になるのは少々痛いなと思いつつ…。

 そんな事を考えながら、停車する一駅一駅を車内から見ていた。幾つか目に停車した駅舎の白壁が目に入り、「よし、降りてみよう」と思った。そこは松前(まさき)という駅だった。

伊予鉄道・郡中線、松前駅の古びた木造駅舎。
(古びて渋み漂う松前駅の木造駅舎。)

 早速、改札を抜け外に出てみた。松前町の中心駅、松山市の通勤通学圏として利用が多いようで、駅前には自転車で埋め尽くされていた。

 渋いこげ茶色の比較的大きめな木造駅舎で、そして古めかしい。たぶん、かなりの年月を経ているのだろう。和風建築の木造駅舎として有名な旧大社駅や、先代の二条駅のように、華やかさや、際立った個性は感じられない。しかし、これぞ日本の駅と言いたくなる、あふりふれた定番のものの懐かしさや安心感のようなものがしみじみと感じられる。一方で、やや大きめの木造駅舎のため、年月を経てきたゆえの滲みは、威風堂々とした雰囲気を醸し出している。

 同じくらい古そうな木造の小さな建物が駅舎に従うように建っているのも目を引く。この建物は駅舎より小さいが不思議と堂々とした空気を放っている。窓一つ無いこの建物は倉庫なのだろうか…?

伊予鉄道、松前駅駅舎本屋と離れのような建物
(倉庫らしき木造の建物が隣接する。)
伊予鉄道、松前駅の待合室。
(待合室。今も大切に使われている。)

 待合室は駅舎全体の3分の1位の区画だが、そこそこの広さはある。ここでも木造で、懐かしげな雰囲気が漂っている。古い駅舎のためか、冷房なんてものは無く、全ての窓は開け放たれている。夏の盛りでとても暑い。待合室にじっと座っているだけで、全身に汗がじっとりと滲む。しかし、中程の木の柱に目を遣ると、うちわがゴムで巻かれ引っ掛けられていた。駅利用者は、そのうちわを自由に使っていいらしい。冷房が無く、夏はどうしても過ごし辛くなるが、少しでも快適に過してもらおうという駅員さんの心遣いが伝わり、嬉しくなってくる。

松前駅駅舎。窓枠は木製のままだ。
(木製のままの窓枠。)

 今に残る古い木造駅舎でも、窓はサッシ窓に替えられ、ムードを損ねている駅は多い。だけど、ここ松前駅は、待合室の窓枠もいまだ木製で、レトロで温かないい雰囲気を醸し出す。

 もの珍しそうにあれこれ駅を見て写真を撮る私に、初老の駅員さんが話し掛けてきた。話の中で、この駅はいつ頃立てられたのかと聞くと、「そうですね、80年位前でしょうか。(※)」という答えが返ってきた。…という事は、単純に引き算をしてだが、1922年、大正11年という事になるが…。

 そのうち、列車の時間が近付き、惜しみながらこの駅を後にした。だけど、運賃を無駄にしてなお有り余る価値のある素晴らしい木造駅舎で、この駅で降りて良かったという満足感は何ものにも代えがたい。そして駅員さんとちょとしたやり取りは、そんな思い出をより温かく印象的なものにしてくれたと思う。


(※何年前と言ってたか、私の記憶が曖昧で、もしかしたら60年位前(1942(昭和17)年)だったかもしれない。それと、駅員さんもいつ建てられたか、知らない様子だった。)


[2002年7月訪問](愛媛県伊予郡松前町)


【約4年半後の
伊予鉄道・松前駅再訪記(2007年1月)」もどうぞ。この時とは違った角度から紹介しています。】