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肥薩線、今に残る明治・大正の木造駅舎を巡る旅(2)~人吉‐隼人間~


大畑駅

JR九州・肥薩線随一の秘境駅・大畑駅の木造駅舎。
( 肥薩線随一の秘境駅・大畑駅の木造駅舎。)
大畑駅、矢岳越えに挑むSLが休息した構内跡に桜が咲く。
(矢岳越えに挑むSLが休息した構内跡に桜が咲く。)
大畑駅、行燈式の駅名標と定期券や名刺だらけの待合室。
( 行燈式の駅名標と定期券や名刺だらけの待合室。)

 難所「矢岳越え」を含む人吉ー吉松間は、大畑駅手前のループ線も印所深い。この区間は、今では列車が一日5往復のみだ。特に大畑駅は駅前に人家は見当たらない。もちろん無人駅で肥薩線の中で最も秘境駅度が高い。

 駅舎は1909年(明治42年)築の開業以来の木造駅舎が現役だ。旅行客が待合室の壁や窓に貼り残していった大量の定期券や名刺は大畑駅名物だ。そんな独特な風景に埋もれながら、待合室は造り付けベンチ、窓口跡など、昔から使い込まれた木の造りが垣間見える。

 冬の終り頃には、近くの大畑梅園の梅が見頃となり、春には矢岳越えに挑む蒸気機関車達がしばし身を休めた広い構内跡の桜が咲き誇る。季節の花を楽しみに、大畑駅を訪ねるのもいいかもしれない。


(熊本県人吉市)[2012年4月、2007年6月、2004年2月訪問]


(※当サイト内関連ページ: 大畑駅訪問記)


矢岳駅

JR九州・肥薩線、矢岳駅の木造駅舎。
( 矢岳駅の木造駅舎、外観も内部も原形を良く留める。)
矢岳駅に停車する観光列車、いさぶろう・しんぺい号
( 観光列車、いさぶろう・しんぺい号が停車。)
矢岳駅、出札口跡。
(窓口・出札口跡も往時のままに残る。)

 矢岳駅にも1909年(明治42年)の開業時の木造駅舎が現役だ。外観も内部も昔のままの姿を素晴らしいまでに留めている。

 肥薩線の超閑散区間・人吉‐吉松間にある、大畑、矢岳、真幸の3駅の中では、駅舎はいちばん大きく、待合室は天井も高く広々とし、かつての賑わいを偲ばせる。構内の側線跡も広い。

 駅舎から少し離れて「人吉SL展示館」があり、肥薩線でも活躍した蒸気機関車・D51-170号機が静態保存されている。かつて並べて展示されていた8620形58645号機は、SL人吉号として復活した。

 矢岳駅は標高536.9mにあり肥薩線最高所の駅だ。駅からは山に囲まれた小さな集落を眺めると、昔ながらののどかな山村風景に心洗われる心地がする。


(熊本県人吉市)[2012年4月、2007年6月、2006年6月訪問]


(※当サイト内関連ページ: 矢岳駅訪問記)


真幸駅

JR九州・肥薩線、やや小振りな真幸駅の木造駅舎。
( やや小振りな真幸駅の木造駅舎。)
真幸駅の石庭。
( 竜安寺の石庭風の庭園。)
スイッチバック上から俯瞰した真幸駅。
( スイッチバックで真幸駅入線前に駅を見下ろす。)

 肥薩線28駅の中で、唯一、宮崎県にある駅だ。1972年(昭和47年)、豪雨で山津波と言われるほど激しいの土砂崩れが、真幸駅と周辺の集落を襲い大きな被害をもたらした。それでも、1911年(明治44年)、開業時からの木造駅舎は耐え忍び100周年を迎えたのだなと想うと、他の駅舎には無い感慨さえおぼえる。

 肥薩線の現在に残る木造駅舎は、全体的に背が高くずんぐりとしているというイメージがあるが、真幸駅駅舎はそれに反し、小形でより標準的な感じがする。

 昔から真幸駅の名物だったホーム上の京都・竜安寺石庭風の庭園は、今では駅舎横に移設されている。


(宮崎県えびの市)[2007年6月訪問]


大隅横川駅

JR・肥薩線、大隅横川駅の木造駅舎。
( 大隅横川駅の木造駅舎。嘉例川駅と並び鹿児島県最古の駅舎。)
大隅横川駅、ホーム柱に残る機銃掃射跡。
( 柱に残る米軍機銃掃射跡の弾痕。)
JR九州・肥薩線、大隅横川駅、駅舎ホーム側。
( 駅舎ホーム側。)

 1903年(明治36年)開業時以来の駅舎で、嘉例川駅と並び鹿児島県最古の駅舎だ。

 ホームの柱や壁には、戦時中の米軍機機銃掃射による弾痕がいまだに残り、戦争を知らない私に戦争の生々しさを伝える。そして、こんな苦難を乗り越えてここに建っているのだと思うと、この駅の凄さを感じずにはいられない。

 駅はかつての横川町の中心駅で、駅舎が登録有形文化財になった事もあってか、周辺は色々と整備されている。小さな公園は地元の人々が気軽に憩えるような雰囲気で、私もここで木造駅舎を眺めながら昼食を取った。また、地区の新成人が毎年、駅内に桜の植樹をしている。駅のポストはレトロな丸ポストに変わった。

 全体的にきれいに整備されすぎて、古くくすんだ駅舎とは何かギャップさえ感じる。しかし、それだけ地元の人々が、大隅横川駅を町の象徴として愛し、駅を良くしたいと思えばこそなだ。そう感じると、何と味わい深い風景かとしみじみと感情が湧き上がって来るのだった。


(鹿児島県霧島市)[2004年2月、2007年6月]


嘉例川駅

JR九州・肥薩線、築百年を越えた嘉例川駅の木造駅舎。
( 築百年を越えた嘉例川駅の木造駅舎。)
嘉例川駅、待合室。
( 時が止まったかのような待合室。)
嘉例川駅、駅事務室側から見た窓口跡。
( 旧駅事務室内の窓口裏。)

嘉例川駅、駅舎印象記

 大隅横川駅と同じく、1903年(明治36年)の駅開業以来から使われ続ける木造駅舎は、数ある肥薩線の木造駅舎の中で今やいちばん有名で、象徴的な存在とさえ言える。観光特急はやとの風が停車すると、数分の停車時間の間に、百年の駅舎を見ようと大勢の乗客が駅前に出てくる。付近に観光バスも停められる駐車場も整備され、周囲には鹿児島空港や霧島温泉もあり、車で立ち寄る人も多い。少し前まではローカル線の小さな駅だった嘉例川駅が、よくぞこんな観光スポットになったものよと思える。

 それでも百年の駅舎は変わらず古い趣をふんだんに湛えた凛とした佇まいだ。そして今日も、大勢の旅行者に時代を超えた木造駅舎の素晴らしさを伝えている。


(鹿児島県霧島市)[2004年2月、2006年6月、2007年6月、2012年4訪問]


(※当サイト内関連ページ: 嘉例川駅訪問記(第1回目第3回目(登録有形文化財登録後) )

『肥薩線、今に残る明治・大正の木造駅舎を巡る旅(1)~八代-隼人間~』はこちらへ!
 八代駅、一勝地駅、…、改修されながらも使い継がれる歴史ある駅舎。