越後岩沢駅~JR飯山線最後のレトロ駅舎!?~



古駅舎の淘汰が進んだ飯山線

 2016年夏、山形と新潟を訪れ、飯山線を経て長野から特急しなので帰路に就くつもりでいた。そこで、飯山線にいい木造駅舎がある駅が無いかとウェブ上で情報を漁った。

 しかし、31駅中、古い姿を留めた駅舎は僅か1駅…、越後岩沢駅だけだった。殆どが建て替えられ、その多くが小さな簡易駅舎になってしまった。100km程度の営業距離のある旧国鉄・JRのローカル線なら、改修されながらも木造駅舎はいくつか残っているものだ。しかし96.7kmに、31もの駅がありながらたったの1駅とは…。ウェブ上で写真を見ただけなので、断言はできないものの、大いに驚かされた。

 このようになったのは、2015年に金沢まで延伸した北陸新幹線の影響も大きい。木造駅舎だった飯山駅は移転し、高架の新幹線ホームを持つ最新の駅舎に建て替えられた。その他の長野支社管内の飯山線6駅は、観光客を意識し「駅舎美化」の名の下に、建て替えやリニューアルが実施された。信濃浅野駅、替佐駅は元々の木造駅舎をリニューアルしたものだが、原形に大きく手を加えていて、まったくの別の駅舎のように変貌してしまった。

帰路、寄り道で越後岩沢駅へ…

 旅の2日目、越後岩沢駅には必ず訪問しようとと思っていたが、途中、列車に乗り遅れてしまい、飯山線経由ではその日の内に帰れなくなってしまった。上越新幹線で東京を経由するしか無くなり、飯山線を乗り通すのは次の機会にと思った。

 しかし“この次”あの木造駅舎はもう無いかもしれない…。飯山線に限らず、新潟県内のJRの駅舎は建て替えが進んでいて、古駅舎の残存率は意外に少ないように思う。なので越後岩沢駅にも建て替えの魔手が伸びてきてもおかしくない。

 越後岩沢駅は幸いにも、上越線との分岐駅の越後川口駅から僅か2駅目だ。時刻表を見て行程を練り直すと、帰路の途上、ちょっと道をそらせば、無理なく訪問できる事に気付いた。

 それでもやや時間があったので、一つ行き過ぎた下条駅(げじょうえき)を見て、折り返し越後岩沢駅にやってきた。

飯山線・越後岩沢駅、廃止されたプラットホームが残る

 1面1線に側線がある典型的なローカル線の配線だが、昔はもう一面、反対ホームがあり、その遺構が今でもはっきりと残っている。

飯山線・越後岩沢駅、廃ホーム跡

 廃ホームはまるで遺跡のように映った。構内通路の階段跡も残っている。

 使われていないとは言え、たまに手入れされているのだろうか・・・?ホーム上の雑草は刈り取られ、咲きそろった花々がきれいで、まるで廃ホームを活かした庭園か花壇のようで悪くは無い。しかし、びっしり生えた苔と錆びきったレールは、駅の衰退を物語っているようでどこか物悲しい。

冬は雪深い飯山線・越後岩沢駅、駅舎の雪囲い

 駅舎ホーム側の窓には、雪囲いの板が丁寧に掛けられ、冬の雪深さを物語っている。ただ、今は夏。立ってるだけで汗が吹き出る程暑い。雪囲いを纏った駅はやや暑苦しく映る。無人駅となり、冬に取り付け春に外すという作業が面倒なので、年中付けっぱなしなのだろう。

飯山線・越後岩沢駅、「計量管理事業場」のホーロー看板

 駅舎には「通商産業大臣指定 計量管理事業場」という小さなホーロー看板が取り付けられたままだった。昔は貨物も扱っていた証だ。

飯山線・越後岩沢駅、待合室の古い駅名標

待合室の扉を開けると、出入口上のこの駅の古い駅名標一点に強く目が引きつけられた。完全に改修された待合室にあって、唯一、古さを感じさせるものだ。

JR飯山線・越後岩沢駅の木造駅舎、待合室

 待合室は徹底低に改修され、古さをほとんど残していない。窓口跡があったと思われる部分は跡形なく埋められただの壁となった。作り付けの長椅子も新しめだった。

JR東日本飯山線・越後岩沢駅、昭和2年築の木造駅舎

 駅舎の正面にまわってみた。木造駅舎だが、外壁は新建材に張り替えられ、右端には倉庫が設置されたのか、シャッターが取り付けられるなど、大きく改修されている。それでも、国鉄やJRの前身の鉄道省が1927年(昭和2年)に十日町線として、越後川口駅からこの駅まで開通させた時以来の古い駅舎だ。

飯山線・越後岩沢駅の木造駅舎、車寄せ

 大きく改修されているが、車寄せは木のままの造りを残す。新建材で覆われ、ちょっと前に建てられた家屋のような雰囲気になった駅舎にあって、この駅の歴史を感じさせる。柱の下部がコンクリートで四角柱のように厚く覆われ、どっしりとした柱に仕上げられているのが独特で印象的だ。これなら雪に押し潰される事も無いだろう。

JR東日本飯山線・越後岩沢駅、駅前に野花が咲く

 駅舎の左前には、荒れた花壇が残っている。放置されて久しいのだろうが、雑草が生い茂る中に、色とりどりの野花が咲き誇る。誰かが植えた花々が、なおも季節を忘れずこうして咲くのだろうか。小さな草原の中の花畑を見ている心地で、不思議と心引き付けられた。

飯山線・越後岩沢駅、側線跡の車庫

 越後川口方にある側線ホームには、プレハブの倉庫が設置されていた。中から除雪車モーターカーのロータリーが僅かに姿を覗かせていた。貨物と言った当初の用途とは違うが、立派に現役の側線だ。

飯山線・越後岩沢駅、駅前の国道117号線

 駅から300メートル弱程歩くと、国道117号線に出る。小高い山々に囲まれた中、家屋が点在するこじんまりとした街並みだ。駅前に越後交通の岩沢駅前バス停があった。

飯山線・越後岩沢駅の木造駅舎、車寄せの柱

 駅に戻ってきて改めて駅を眺めると、昔ながらの形をした木造駅舎と、どっしりとした柱を持つ木のままの車寄せはやはり印象深い。新建材で外壁こそ改修されているが、飯山線最後の古駅舎の風格を十二分に漂わしている。

 よく眺めると、向かって左側の柱が真っ直ぐでなく、角が削られようになっていて、直線でないのに気付いた。あれ?何でと不思議に思った。こういう柱の場合、きっちりと四角柱に加工された木が使われている場合がほどんどだ。模様が彫り込まれている場合もあるが、この柱の場合はそんな感じでもなく、四つの内の三つの角が削り取られた様になている。もう一方の柱はちゃんと四角柱に加工されている。

 腐食した部分を削り取ったのだろうか…。

 いや、それとも木を切り出す時に、失敗してしまったか、端の半端な部分がきれいな四角柱にならなかっただろうか…。それでも、一応、柱として使うには問題無いし、廃棄するにはもったいないから、「えい、使ってしまえ!」という事になったのかもしれない。大工さん達のそんな息遣い、それとも「まあいいよ」と許容した大らかな国有鉄道の担当者の空気感が伝わってくるかのようだ。

[2016年(平成28年) 8月訪問]

~◆レトロ駅舎カテゴリー: 一つ星 JR・旧国鉄の一つ星駅舎

越後岩沢駅・基本情報+

鉄道会社・路線名
JR東日本・飯山線
駅所在地
新潟県小千谷市大字岩沢
駅開業日
1927年(昭和2年) 6月15日
駅舎竣工年
1927年 ※駅開業以来の駅舎
駅営業形態
無人駅
その他の訪問手段-路線バス
越後交通の長岡駅前-小千谷‐十日町線が、岩沢駅前から十日町まで飯山線にほぼ沿うルートで運行されている。
(参考URL: 越後交通路線バス・小千谷地区の時刻表)
飲食店
駅前に農家レストラン・喫茶「より処 山紫」がある。詳しくは公式サイトFacebookページまで。