予讃線・下灘駅の荒れた日本庭園跡



駅舎の横にひっそりと残る庭園跡

 青春18きっぷのポスターやプラットホームから瀬戸内海を望める事で有名なJR予讃線、愛媛県の下灘駅を訪れた。駅構内や周辺を歩いていると、駅舎の横に荒れ果てた庭園の跡を発見した。

JR四国・予讃線・下灘駅構内にある廃れた池のある庭園跡(2002年)

 この庭園の遺構、よく見ると池もあったようだ。池周りに配された石が無ければ見落としそうな程、どくだみや色々な草で見事なまでに埋もれていた。小さな石の灯篭や松の木も配され、ささやかながらも日本庭園風の空間だったのだろう。駅にこんなモノがあるのが面白く、なおかつ不思議に思いながらシャッターを切った。

[2002年(平成14年) 7月訪問](愛媛県伊予市)

原点の駅へ再び…

 駅舎に興味を持ち、加えて駅構内や駅周辺を観察するようになった。そして、時々目にする事があった廃れた池庭の跡…、枯池に興味を持つようになった。何故、鉄道輸送に全く不要なこのような物が、わざわざ造られ駅にあるのかが不思議だった。そして、丹念に作られたであろう池や庭園が、水が枯れ廃れたまま残されている様が、駅の衰退を見せ付けられているようで、どこか物悲しく映った。しかし一方で、不思議と魅かれた。

 撮影した何本ものフィルムを見ても、そんな枯池を撮影したのは、どうやら2002年の夏の下灘駅のものが最初のようだ。つまりは、今思えば下灘駅のこの枯池こそ、興味の原点だったのだろう。

 その原点にもう一度触れてみたかった。興味を持ち始めた初期よりもじっくりと鑑賞するようになっていたので、新たな発見もあるかもしれないし、下灘駅を撮影したフィルムを失くしたので、撮り直したかったという理由もあった。前回が夏で草がぼうぼうに生えていたので、違う面から観察するには、そうでない時季がいいと考えていた。

 そして初訪問から約6年後の2008年、再び下灘駅を訪れた。前回と同じく天気には恵まれず、空と海の色は沈みがちだった。

JR四国・予讃線・下灘駅、駅舎横にひっそり残る池庭跡

 想像していたのと全然違っていた。思ったより広く奥行きがり、存在感がある池だったに違いない。だが、妙に浅いので、水が抜かれた後に、土で埋められたのだろう。

 下灘駅構内は、島式のホームのいちばん海に近い側の番線以外は埋められているが、このホームが現役だった頃、レールを隔てホームで列車を待つ乗客の目を引き付けたのだろう。前回訪問時とは一見、大きな変化は無いようだが、うねるように伸びていた松が無くなっていた。腐食して崩れ落ちたのだろうか…。

予讃線・下灘駅、駅舎内の待合室から枯池と瀬戸内海を望む

 待合室からも枯池は望める。池に水があった頃は、瀬戸内海を借景にした日本庭園がこの待合室から望め、ここで列車を待つ人々はこの唯一無二の駅風景に思わず見入ってしまったのだろう。

 しかし、この池を設置した人はどこまで計算してこの位置に池を配したのだろうか?何も考えなくただ単に、待合室の横が空いていたからか…、待合室に居る乗客の目を楽しませる…、それとも瀬戸内海を借景にする事まで計算に入れいていたのだろうか…?

海を背景にした下灘駅プラットホームと駅名標、そいて枯池…

 下灘駅と言えば、ホームから瀬戸内海を望める風光明媚な駅として有名で、青春18きっぷのポスターに3回も採用されている。4回目は下灘駅の駅名標と海をバックにした枯池の風景が18きっぷのポスターに採用される!…訳ないか (笑)

[2008年(平成20年) 3月訪問]

下灘駅訪問ノート(駅舎…)

JR四国・予讃線・下灘駅、昭和10年の駅開業当初からの木造駅舎

 駅舎は新築のように改修されているが、駅開業の1935年(昭和10年)築の木造駅舎が現役。無人駅だ。

 プラットホームから望む海の絶景は、鉄道ファンだけでなく旅行者にも人気で、最早、愛媛県の有名観光スポットのひとつと言えるだろう。


 前回2002年に訪れた時は、そんな明るい話題の影に、下灘駅の栄枯盛衰の跡を感じたもの…。訪問記は下記リンクからどうぞ。


関連ページ: 予讃線・下灘駅~瀬戸内海を見渡す駅、栄枯盛衰の残り香~


レトロ駅舎カテゴリー: 一つ星JR・旧国鉄系の一つ星駅舎