~駅の枯池(+池庭)~
駅舎に寄り添うように…
駅の片隅にひっそりと…
日本全国の駅を巡る旅で見つけた、駅の中の池のあるミニ庭園、またはその遺構、つれづれ。
日田彦山線の採銅所駅は約5年振り2度目の訪問となる。前回は駅の池庭に全く興味が無いながらも、駅前に池があったのを不思議とよく覚えていた。なので、再訪にあたり池をもっとじっくり観察したいと思っていた。
だが、駅前を探しても池は見当たらなかった。私の記憶の中では、特に意識しなくても目に付く目立つものだった筈だ...。駅前にあるロータリーの中の植込みがどうもあやしい。しかし、深さが無く池跡には見えなかった。それに目立つといっても、ロータリー程の大きさでもなかったような...。
どうも解らず、たまたま駅にいた地元の人に聞いてみた。すると...
「うん、埋められちゃったよね。無人駅で管理する人がいないし、子供が落ちたら危ないから...」
やはり、この緑豊かなロータリーがあの池の跡だったのだ。
駅前は狭いにも関わらず、ロータリー状のものを造り、しかも池庭まで整えたのだ。現代の感覚なら、そんなもので場所を取るより、駐車スペースを広く取るものだろう。ロータリーの直径は約4~5メートルになり、真ん中には石が組まれ、縁には桜の木まで植えられている。山間の小駅にこんな立派な池庭をよく作ったものだと感心する。しかし、見事に池は埋められ、かつては池であった事を感じさせない。埋められて何年経ったかは知らないが、もう雑草が成長してて、ただ単にロータリーに木々を植え込んだだけにしか見えない。
しかし、これが池跡と解り、更に観察を進めた。縁をよく見ると、ロータリーの内側にコンクリートの縁取りのようなものがあるのを発見した。これより内側に水が入っていたのだろう。
中央をよく見てみると、組まれた岩の陰から鋳潰された注水口が残っているのを発見した。注水口は上を向き、鋳潰される前はもっと長かったのだろう。きっと現役の頃は噴水で、水を威勢よく噴出し、岩を濡らしながら池の水を満たしていたのだろう。
帰ってから前回訪問時のフィルムをよく見ると、池そのものを撮ったものは無かった。しかし駅舎をプラットホームから撮影したコマの片隅に、池の一部が写りこんでいるのを発見した。とても小さいが、周囲にすっかり錆び付いた柵が設置されているのが分った。この柵は池を埋めた時に撤去されたのだろう。
[2008年11月訪問](福岡県田川郡香春町)
(※当サイト内関連ページ: 古く美しき駅舎・採銅所駅訪問記)